現在、畜産業界では「輸入に頼る穀物(飼料米や麦、とうもろこしなど)の高騰の影響は甚大で、畜産農家の半分は数年で廃業」といった声が聞こえてきます。
また、NHK「クローズアップ現代」などで養鶏のアニマルウェルフェアが取り上げられたことがきっかけで、この議論も活発化しているように思います。
そこで長野県大鹿村のアルプス牛でおなじみ、まあのの小村さんにお願いし、畜産農家さんの現状や、畜産を取り巻く課題を教えていただきました。
通信「de mano」やホームページでくらしを耕す会としては、とても心強いメッセージを発信していただいているので、今更ですが、改めて、お肉とむきあうなかで小村さまが大切にされているポイントを教えていただけますか?
「お肉はほんのちょっとだけ」、を掲げていますが、お肉を食べるまでにかかるエネルギー(飼育だけでなく、物流(クール)や屠場やカット工場の冷房、保管(冷蔵)など)は莫大にかかるので、お肉はあくまでも暗好品の位置付け、と考えています。
お肉の、飼育からスーパーなどに並ぶまでの過程について、費者が知ることはなかなか無いと思うので、橋渡し役としてつくる人と食べる人をつなげること、を大切にしています。
国産の飼料穀物を確保できている農家さんは数軒で、輸入に頼らざるをえない農家さんは、絶望感を感じていらっしゃる方もいる、と伺い、くらしを耕す会としても、とても心配していますまた、輸入飼料だけでなく、燃料代や電気代、資材代も高騰しています。
餌のうち、フスマ、大豆は国産、サイレージは自給、ワラは可能な限り地域自給しています。
しかし、子実トウモロコシ(トウモロコシの実を餌とするもの)は大きな問題です。国内生産はまだ始まったばかりで、今は、北海道で主に生産されていますが、国内需要を満たす量は確保できておらず、大部分は輸入に頼っています。この子実トウモロコシが生育ステージによりますが、餌の大きな割合を占めており(牛で45%)、大鹿村の方々も輸入に頼っています。
更にNonGM(遺伝子組み換えでない)にこだわっていることもあり、ここ2年で74%値上がりしていていて、経営を圧迫しています。
消費者の皆様に既に何度も値上げのお願いをしてきましたが、これ以上の値上げは厳しいと考えています。
しかし、畜産農家も厳しく、このままでは、お肉を食べられなくなる時代がくるのでは、と心配しています。
大部分を輸入に頼る原因は、農業における国策の失敗だと考えており、畜産農家を支える飼料の国内生産拡大により積極的に取り組んでもらいたいです。
子実トウモロコシを国内で手に入るふすまや大豆などの別の穀物に変えることはできないのでしょうか?
お肉の質が変わってしまうので、餌を変えることが難しいようです。
話は変わりますが、養鶏業界は、アニマルウェルフェアの観点から、欧米と同様にゲージ銅の養鶏を廃止などの議論が聞こえてきます。牛や豚の飼育に関しては無知なのですが、状況如何でしょうか?
青木さんは、ゆとりのあるスペースで基本的に6頭を群れで飼う「群れ飼」ですが、牛が怪我をしないように角を切る除角をしており、もうひとりの生産者の福沢さんは、1頭づつを個別に飼う「個飼い」のため、除角はしていません。(仕入れた仔牛がすでに除角されている場合があります)
欧州基準のアニマルウェルフェアを満たしてはいない部分もあると思いますが、アルプスを望む素晴らしい場所で出来うる最大限配慮した飼育をされているのがポイントだと思います。
農水省などから、アニマルウェルフェアに関する指導などはありますか?
生産者さんに聞く限りはないようですね。日本の実状にあわせ、実現可能なものになるかがポイントだと思います。今は、リニアモーターカーの工事の影響がとても心配です。毎日すごい台数のトラックが近くで土砂を運んでおり、その廃棄場所も決まっていないようです。
なかなか厳しい状況ですが、まぁのさんの後継者はお考えですか?
私の代で終わりにします。なかなか先行き厳しいと考えています。
最後に、くらしを耕す会の会員さんに向けて、メッセージを頂けますか?
厳しい話が続きましたが、引き続き食べる人とつくる人の間に強い倍頼関係を築くことを続けていきます。くらしを耕す会さんにも直接お邪魔したいと思いますので、その際に、顔を見てお話しましょう!
Comments